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大阪万博に向けて熱気高まる、XRビジネスマッチング展示会「Meet XR 2023 関西」を振り返る(現地レポート)

(撮影:筆者。以下同じ)

XRビジネスマッチング展示会「Meet XR 2023 関西」が、2023年5月30・31日の2日間、グランキューブ大阪で開催されました。

27社が出展し、14名の講演者が登壇。ブース数も昨年より大幅に増加し、XR/メタバース業界に関心を寄せる約600名(公式発表)が来場。

最新デバイス体験や活用事例の収集、ビジネスマッチングが行われ、出展社の間では「(他社が展示した)あの技術を、自社製品に活用したい」といった声も聞こえました。

本記事では、記者がデモ体験できた展示ブースを中心に、盛況のうちに終了した現地の様子を詳しくレポートします。

進化するMeganeX! 2025年までに新バージョン登場か?(Shiftall/Panasonic)

ShiftallPanasonicのブースでは、アウトサイドイントラッキングをつけた眼鏡型VRグラス「MeganeX」と、VR空間の温度変化を擬似体験できるパーソナルエアコン「Pebble Feel」を組み合わせた視覚×触覚体験ができました。

さっそく「MeganeX」をかけると、岩づくりの露天風呂が並び、VRChatの中に温泉宿が広がりました。夜空の暗闇を表現した「漆黒」のニュアンスが、色のひずみなく、しっかりと再現されています。5.2KのOLED(有機EL)ディスプレイならではの、リアリティのある映像に圧倒されました。

(温泉につかって、夜空と満月を眺める場面。露天風呂の下に川が流れている)

次に温泉につかってみると、首もとにとりつけた「Pebble Feel」がじんわりと温かくなります。

(「温度」を感じるデバイスPebble Feel。首もとに装着することで熱さや冷たさを自在に表現)

仮想空間の場所ごとに、体感できる温度をそれぞれ変えてプログラムしているとのこと。たしかに温泉のあと、川に入ると、水の冷たさを感じられました。視覚に加えて、温冷感覚を同時に体感することで、ワールドの没入感を高めています。

(額で支えるパッドでつけ心地も快適に。オプションの専用アダプターで、アウトサイドイントラッキングにも対応)

またMeganeXの上部には、おでこでデバイスを支えるパットがついていました。鼻と耳だけでデバイスを支えるよりも、ずり落ち感がなく、より楽に装着できました。

もともと重量320gと超軽量ですが、デバイスを支える圧力を分散することで、さらに疲れにくく、長時間の快適なプレイを可能にしています。

最後に、「MeganeX Business Edition」でB2B向けの「自動車」試乗デモを視聴しました。車体のボンネットのメタリック感や、塗装部への風景の映り込みなど、車の質感が、細部まで綿密に表現されていました。

車内に入っても、スピードメーターの数字がくっきりと読めるのはもちろん。車内の革、座席の布、ボードのプラスチック感など、視覚でそれぞれの素材の違いを認識できます。

特に色彩表現には、目を見張りました。色の明暗や濃淡などのコントラストが適切で、自然でなめらかなトーンの表現に魅了されました。

両社は2025年の大阪万博に向けて、「MeganeX」の次のバージョンを検討しているとのこと。「ビデオシースルーやワイヤレスなど、顧客からの要望にも応えていけたら」と話していました。今後の改良が待ち望まれます。

手軽にアバターを動かせる! 画像認識でリアルタイムモーキャプ(デジタルスタンダード)

会場内でも驚きを呼んだのは、デジタルスタンダード。画像認識でモーションキャプチャができる、マーカーレスフルボディトラッキング「TDPT(Three D Pose Tracker)」の最新版デモを体験しました。

(体には何もつけなくてOK。Webカメラの前で自由に体を動かすだけでアバターを操作)

「Amazonで5,000円くらいで買った」(担当者談)という、Webカメラの前に人が立って動くだけ。着替えたり、体に何かを装着しなくても、リアルタイムにアバターを操作できます。またスマホカメラだけでも高い精度でアバターを動かせる手軽さは、まさに感動もの。

深層学習(ディープラーニング)を用いた画像認識で、身体の24の検出ポイントを認識し、体の動きを、アバターに反映しています。ただし、同時に検出できる対象は1人だけとのこと。

(画像認識AI技術で、体の24の検出ポイントを3次元の座標で出力)

「TDPT」は、人体の姿勢を3次元で推定する技術で、2次元情報だけでは人間がどちらを向いているかわからないという問題を解決しています。カメラの前に立つだけで、人間のポーズをAIが解析。その結果をアバターにフィードバックしています。

しかも「TDPT」(Windows版)は、フリーウェアとして配布されています。ソフトウェア開発キット「TDPT SDK for Unity」も、1ライセンス350,000円(税抜)で提供中です。

デジタルスタンダードは、今後も「世界の標準」となる、画期的なソリューションサービスの展開を目指すとのことです。

手法は選択自由。軸をぶらさず、価値をアウトプットする(THINK AND SENSE)

出展ブース担当者が「ゴールが大事であり、軸をぶらすことなく、アウトプットすることが大切」と語るなど、プロジェクトに対峙する熱い姿勢が印象的だったのが、THINK AND SENSE

展示ブースでは、「事業企画」「システム運用開発」「テクノロジカルクリエイティブファーム」「広告・メディア&エンターテイメント」など、ジャンルの垣根を超えた幅広い事業を紹介。新しいコミュニケーション手法を実装してきた実績に基づくメッセージを、パネル形式で展示していました。

担当者は取材に対して、「AIやVRなどの新技術は、表現手法でしかない」「顧客からの要望にあわせて、本当に提案したい価値をユーザーに向けて、どう発信していくかを重要視している」と語りました。これからも「テクノロジ-を活用して、クリエイターやパフォーマーの創造性を拡張させる、新しい領域を目指していく」とのこと。

集英社やNianticなど、名だたる企業とプロジェクトを行う同社の自負を感じる展示でした。多くの実績を踏まえ、さらなる表現の高みを追及するTHINK AND SENSEに、今後も注目です。

裸眼で迫力ある動画を楽しめる3Dタブレット(ZTEジャパン)

専用の眼鏡も不要。裸眼で、奥行きのある3Dコンテンツを楽しめるAndroidタブレット「nubia Pad 3D」。中国の大手通信機器メーカーZTEの日本法人ZTEジャパンが展示していました。

タブレット本体に特殊レイヤーを搭載することで、2D映像を3D変換して表示できます。海外での販売価格は1,199ドル(約16万円)。日本では2023年7月より量販店で販売を開始予定とのこと。

スペックは、チップセットがクアルコムの「Snapdragon 888」、画面サイズは12.4インチ。解像度は2560×1600で、重量は780gです。iPad Pro 12.9インチが682gなので、少し重めのタブレットといった感じです。

機能面では、新たに撮影した画像を立体で表示できるだけでなく、チャット画面、動画再生、ゲーム、ネット上の画像など、既存のコンテンツもすべて3D変換できます。2K以上の解像度なら、「ほぼ9割」(担当者談)が瞬時に3Dに変換できるそう。表示の切り替えはボタンを押すだけで、手軽に3Dの立体映像を楽しめます。

(画像では伝わらないが、迫力ある3Dの商品や動画が観られる)

2D画像の色の連続性、光の明暗、角度などから画像内容を判断し、被写体の各部位をレイヤーに分解。各レイヤーを再レイアウトすることで、3Dの立体画像を表現しています。

担当者によると、ZTEジャパンはこの技術を「教育や商品展示、建築、医療、デザイン分野などで活用していきたい」とのこと。

会場デモでは『鬼滅の刃』の2D画像や映画「タイタニック」を3Dで視聴できました。『鬼滅の刃』のキャラクターと背景に立体差ができ、奥行きある画像として表示されていて、3D映像をより簡単に楽しめる未来を予感させてくれました。

振動や動きなど、触覚のフィードバックを与えるハプティクス技術などとペアリングすることで、映画館の4DXのような体験を自宅でも味わえる日がくるかもしれません。

映像酔いを防止。仲間とMR空間で快適に作業できるシステム(国立研究開発法人情報通信研究機構 未来ICT研究所)

情報通信分野の基礎研究を行う国立研究開発法人情報通信研究機構 未来ICT研究所のブースでは、MRデバイスを装着していないパソコン側でも、リアルタイムにMR空間を認識・制御できる技術を紹介していました。

固定カメラで撮影した実写映像に3Dオブジェクトを重ね、パソコン側でリアルタイムに描画する仕組みです。

このシステムは、デバイス装着者の視聴映像を他の人と共有したいとき、デバイスの動きに連動して映像が上下左右に揺れ、装着者以外が酔ってしまうという問題を解決します。

(デバイスなしでも、PC上でMR空間を観ながら、リアルタイムに制御や操作が可能)

実際に体験した来場者からは、「(こんなアイデアは)思いつかなかった」「従来型のXRの弱点を克服している」「Hololens2の弱みを補完している」との声が寄せられていました。

同研究所は、本システム納品後の運用・保守といった、顧客サポート業務を担えるパートナー企業を募集しているとのことです。

Varjoデバイスと脳の計測ツールがコラボ(エルザジャパン/NeU)

XRデバイス「Varjo」を日本向けに展開するエルザジャパンと 、前頭前野の計測装置を手がけるNeUは共同で、MRシミュレーションに最適化した新モデル「Varjo XR-3 Focal Edition」と、携帯型脳活動計測装置「HOT-2000-XR」を使ったデモを行いました。

「XR体験中の脳活動を(ビジュアルイメージで)みたい」という要望に応えようと始まった共同取り組みです。「Varjo XR-3」と「HOT-2000-XR」を使用し、XR体験者の脳血流や心拍の変化などを、光トポグラフィ技術で測定します。

(ベルトを頭に装着し、デバイスをセット。映像視聴中の脳活動がグラフに表示される)

会場デモでは、ふたつのデバイスを装着しながら、VR上の映像を視聴しました。デモの終了後にグラフを確認すると、映像の特定シーンで脳が反応していたことが分かります。装着者(本人)も認識できない脳血流の変化を捉えているのです。

このデバイスで脳活動データを取得することで、視聴者の直感的な反応や、無意識の関心がどこに向いているのかを可視化できます。収集したデータをニューロマーケティングに活用することも検討中とのこと。展示担当者は、「脳活動や視線といった生体フィードバックを活かして、VRとリアルのギャップを埋めていきたい」と語りました。

法人サポートも充実。ビジネス向けPICO 4 Enterpriseを体験(Pico Technology Japan)

Pico Technology Japanのブースでは、2023年1月に国内発売を開始した、ビジネス向け一体型VRヘッドセット「PICO 4 Enterprise」を展示していました。

(ストラップなしの)重さはわずか300gの「PICO 4 Enterprise」。実際に装着してみると、その軽さに驚きます。ほとんど重さを感じさせません。4つのSLAMカメラでトラッキングし、解像度は4320×2160、視野角は105°です。アイ&フェイストラッキングも搭載しており、手軽な操作で、クリアな映像が楽しめました。担当者によると、「頑丈で使いやすく、拡張性が高い点もポイント」とのこと。

また、同機はカラーパススルー機能も備えており、ヘッドセットの画面越しに、外の景色を確認できます。デバイスをかぶっていても不安を感じにくい、VR初心者の利用も想定した機能です。IPD(瞳孔間距離)の自動調節にも対応し、よりVR酔いしにくい設計になっています。

さらに、同社のソフトウェア「PICO Business Suite」を利用することで、複数デバイスの管理も可能に。デバイスを起動してすぐに利用コンテンツを表示したり、コンテンツの一斉配信やアクセス権限の一括設定ができます。職場や学校などで、XRヘッドセットの操作に不慣れな人が、大人数で同時にデバイスを体験する場面にふさわしいデバイスでしょう。

法人サポートの体制も整っています。「国内の営業カスタマーサポートも利用でき、要望にあわせてカスタマイズの相談もできる」とのこと。日本語対応で得られる安心感は、日本国内でビジネスを推進する上で、重要視されると考えられます。

次回のイベントにもご期待ください

ここまで現地レポートをお届けしました。参加者の熱量も高く、関西エリアのXR業界全体が盛り上がる様子を肌で感じることができた「Meet XR 2023 関西」。「XR Kaigi 2022」から半年も経たない中、さらに驚くような技術やデバイスが登場し、その進化のスピードには目を見張るものがありました。

Mogura VRは、「XR Kaigi」「Meet XR」を始めとした、さまざまな体験イベントを開催しています。もし興味をお持ちいただけたなら、次回のイベントにも、ぜひ参加してみてください。

●関連イベント「ビジネスマンなら知っておきたい!XR・メタバースまるわかりセミナー」

2019年からMoguraが開催する人気セミナーです。一見分かりづらいXR/メタバース業界の市場動向をわかりやすく解説します。

今回は、Apple Vision Proを始めとした、2023年に注目のハードウェア/プラットフォーム、コンシューマー市場動向、産業活用事例などを語ります(登壇者:久保田瞬(Mogura VR News編集長))。

初回は6月19日19:00から。参加申込はこちらのリンク(Peatix)から(視聴無料・質疑応答あり)。

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