6月7日、いわゆる「知財六法」を改正する「不正競争防止法等の一部を改正する法律案」が参院本会議で可決され、法案が成立しました。XR/メタバース分野のクリエイターが権利保護を行いやすくなるほか、侵害行為のペナルティが重くなります。
(出所:経済産業省ウェブサイト)
法改正の概要
6月7日、第211回通常国会に提出された「不正競争防止法等の一部を改正する法律案」が、参院本会議で可決・成立しました。改正対象は「知財六法」(特許法、実用新案法、意匠法、商標法、不正競争防止法、著作権法)のうち、5月に改正案が成立・公布済みの著作権法を除く5法です。本案は「デジタル化に伴う事業活動の多様化を踏まえたブランド・デザイン等の保護強化」を目的として、経済産業省が提出していました。
デジタルデータによる商品形態模倣の違法化
まず、「デジタル空間における他人の商品形態を模倣した商品の提供行為も不正競争行為の対象とする」(不正競争防止法)という改正が行われます。
たとえば、「フィジカルな商品(有体物)の形態を3DCG モデル(無体物)として忠実に再現し、ネットワーク(電気通信回線)を通じて送信して、ユーザーの端末画面上に画像又は映像として表示させる行為」が違法となると考えられ、SNSや投稿サイト、メタバース空間などにおけるクリエイターの創作活動にも影響が出る見込みです。
ファッションアイテム(衣服・小物)やキャラクターグッズ・ぬいぐるみ、日用品・飲食品、乗り物、施設・建物といった「フィジカルな商品」に加え、アバターや3D素材、音声、モーションといった「デジタルな商品」の形態模倣も対象となる可能性があります。
今回の法案成立を受けて、近く関係省庁が逐条解説等を行うなど、違法行為の該当条件について整理が進むと見られます。
ブランドやデザインの保護制度が使いやすくなる
また、今回の法改正によって、「先行商標権者の同意があり出所混同のおそれがない場合には、他人の登録商標と類似する商標を登録可能とする。また、一定の場合には、氏名を含む商標を他人の承諾なく登録可能とする」(商標法)ことで、個人名を屋号・ブランド名とするクリエイターの商標登録が行いやすくなります。
加えて、意匠登録に必要な証明書をオンライン提出でき、提出対象も「最先の日に行われたものの一の行為」のみで事足りるなど、「創作者等が意匠登録出願前にデザインを複数公開した場合の救済措置を受けるための手続要件を緩和」(意匠法)します。
例としては、個人クリエイターがハンドメイド品をSNSなどで販売するにあたって、意匠登録による権利保護を求めやすくする狙いです。
侵害行為の範囲が広がり、損害賠償が重くなる
そして、営業秘密の不正利用をめぐる「損害賠償訴訟で被侵害者の生産能力等を超えるとして賠償が否定されていた損害分も使用許諾料相当額として損害賠償請求を可能とする」など、権利侵害のペナルティが重くなります。
さらに、今回の改正には「秘密として管理されたビッグデータも限定提供データとして保護し、侵害行為の差止請求等を可能とする」ことも含まれます。
「典型的なデータベースソフトウェアが把握し、蓄積し、運用し、分析できる能力を超えたサイズのデータ」(総務省「情報白書平成24年版」)が営業秘密の一種だと明記されることで、被害者が問題解決を試みやすくなります。
たとえば、個人情報やセンサーデータ、音声や動画像データなど、XR/メタバース産業において重要なデータが不正に漏洩・流出した際に、より効果的な対応が行えると期待されます。
クリエイターの権利侵害をめぐる法整備が進む
このほか今国会では、「著作権法の一部を改正する法律案」(5月26日に公布)や「民事関係手続等における情報通信技術の活用等の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案」(6月6日に可決成立)、「インターネット誹謗中傷対策の推進に関する法律案」(5月12日提出、審議待ち)が提出されています。
各法案はそれぞれ、著作権侵害における損害賠償額の増加、裁判手続きの迅速・簡素化、いわゆる「ネットリンチ」に対する政府の対応強化などを求めています。
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